WING Inside story




 ここでは「WING」がいかにして誕生したか、これまでの経緯を詳しくご紹介します。なお下記の文中、登場する方々のお名前はすべてイニシャルとさせていただきました。また、WING開設に向けて多くのアイディアを提案し、実りある議論を戦わせてくれたwing-ml会員のみなさんに心より感謝いたします。


●1996年12月30日
 午前3時頃、IGSで遊んでいたTKに、Oと名乗る人物が、「日本でも囲碁サーバ(NNGSクローン・サーバ)を実験的に作ってみました。今から遊びに来ませんか?」とtellコマンドで話しかけてきた。誘われたTKはさっそく遊びに行き、Oと初対局。深夜のため30手ほどで打ち掛けとなり、ネット仲間に宣伝することを約束。IGSでOがTKに声をかけたのは、userコマンドで表示された日本人ユーザーの中で、たまたまTKが一番上に表示されたため。

●12月30日
 午前10時32分、囲碁MLに対し、「Japanese Go Server Open!」と題した第一報がTKより投稿される。ただしサーバのアドレスは未記入であった。年末とはいえ、囲碁ML会員数名よりさっそく反応があり、午後6時46分、TKはアドレスを記した記事を投稿。新サーバ(以下NNGS-J)は、本家NNGSのフリーソースをコンパイルして立ち上げたもので、東京の某プロバイダーに置かれていた。

●12月30日深夜
 囲碁ML会員数名がNNGS-Jに次々に訪れ、チャットを楽しむ。年末に飛び込んできたビッグニュースにみな興奮気味。

●12月31日
 午前1時35分、囲碁MLに対し、会員のYTより「NNGS-Jは日本語が使える」との記事が投稿される。ただし実験段階のためサーバの日本語化は不完全で、レーティングシステムも組み込まれていなかった。囲碁MLにNNGS-J開設の第一報が流れてから20時間強のうちに、アクセス数は100以上、登録者数は数十人に達した。

●1997年1月1日
 午後1時28分、囲碁MLに対し、「私の力では日本語化するのは難しいので、どなたかボランティアで一緒にやってくれる人がいたら、うれしいです」というOからのメッセージが、TKによって転載投稿される。じつはOは、東京の某大学に在籍する中国人留学生で、学業のかたわら、NNGS−Jの置かれたプロバイダーでユーザーサポートの仕事に当たっていた。また、このころより、MS、IK、MKのプログラマー等が個別に協力を申し出、Oとの個人的なメールのやりとりが始まる。また同時に、NNGS−Jの日本語化の作業が開始される。

●1月6日
 午前3時30分、Oより、協力の申し出のあった人々に対し、「nngsj-mlを作った」とのメールが発送される。このnngsj-mlメンバーのうちの数人が、やがてWING創設の母体メンバーとなる。

●1月7日
 午前4時39分、MSよりnngsj-ml宛に、「点数制のレーティングシステムにいくつか改良を施したものを作ってみたので、みなさんで検討してほしい」との投稿がなされる。

●1月8日
 午前4時04分、MSよりnngsj-ml宛に、「Rating System for NNGS-J」と題する私案が提出される。以後、もっぱらML上では、このレーティングシステム案に関しての議論が中心となる。

●1月10日
 メールサーバの不具合によりMLの投稿先が変更される。これ以後、MSが作った新NNGSJ-ML宛に投稿がなされるようになる。

●1月中旬
 少人数によるレーティングシステムの検討が続くなか、NNGS−J自体は、レーティングシステムのないローカルな囲碁サーバであり、さほど宣伝もしていないためか、相変わらず閑散とした状態が続く。また、このころ、囲棋文化研究家OMにアドバイザーとしての参加を要請、快諾を得る。

●1月30日
 午前9時03分、囲碁MLに対し、「2月1日(土曜日)に新年碁会をNNGS−Jでやりましょう」との記事が、囲碁MLの会員KOより投稿される。

●2月1日
 午後3時、NNGS−Jにて囲碁MLの新年碁会が開催される。開始時刻のかなり前からログインしている人もいて、多人数が集まることへの期待が感じられる。結局、この日だけで約30人が訪れて一日じゅう対局やペア碁を楽しみ、まずは盛況であった。またこのころ、MS、IK、MKの各プログラマーが有するローカル・サーバ内で、各人がコンパイルしたNNGSがテスト用に稼働を開始する。

●2月6日
 午前9時52分、日本のIGSユーザー(.jpドメイン)のもとに、「IGS有料化のお知らせ」なる電子メールが、NKBおよびパンダネットより届く。NNGSJ-MLのメンバーは、NNGS−Jのレーティングシステムを早急に完備する必要があることを痛感する。

●2月11日
 午後9時33分、MSよりNNGSJ-ML宛に、「Summary of Rating System」(レーティングシステムのまとめ)が投稿される。これがWINGのレーティングシステムの原型となる。

●2月中旬
 IKが、メッセージやヘルプファイルの翻訳作業に取りかかる。またこのころより、Oが大学卒業後に中国に帰国する旨の話が、どうやら本決まりとなる。と同時にサーバの移転問題が発生し、移転先の検討・打診に関して、OとNNGSJ-MLメンバー各人との個別メールのやりとりが行われるようになる。

●2月下旬
 OやMSが個別にサーバの移転先を探すが、いずれも結論の出ない状態が続く。同時にこのころ、各人が本業のほうでそれぞれ多忙となり、NNGSJ-MLは実質的に活動休止状態となる。

●3月9日
 午前3時18分、OよりNNGS-Jユーザー宛に、「帰国のため3月10日をもってNNGS-Jを閉鎖する」旨のダイレクトメールが送られてくる。午前10時34分、TKよりNNGSJ-ML宛に「NNGS-Jの再建をはかるために今後もMLを継続し、再建または新設の道を探ってはどうか」との投稿がなされる。

●3月10日
 NNGS−J閉鎖。立ち上げから閉鎖まで、わずか72日間という短命サーバであった。

●3月14日
 かねてよりMSが打診していた某氏より、「サーバの開設に協力できる可能性がある」との返事が寄せられ、MSがそれをNNGSJ-MLに転載投稿する。いわば返事待ちの状態となり、この投稿を機に、再びNNGSJ-MLはしばらく活動休止状態となる。

●3月31日
 TKより、MSとIK宛に、「MLをもっとオープンにし、ボランティアによるサーバ開設の呼びかけを行なったらどうか」との提案がなされ、合意する。

●4月4日
 MSよりNNGSJ-ML宛に、「MLを引っ越し、新たにオープンなJIGS-MLを作った」旨の投稿がなされ、同時にJIGS-MLの運用が始まる。これによりNNGSJ-MLは、JIGS-MLへと発展解消することとなる。なお、JIGSとは、Japanese Internet Go Serverの略称である。

●4月5日
 午前10時50分、TKより囲碁ML宛に、「JIGS-ML会員募集のお知らせ」と題する投稿がなされる。以後、2〜3日のうちに新規ML会員数は約30名に達する。

●4月11日
 MSよりJIGS-ML宛に「Summary of Rating System」(改訂版)が投稿され、レーティングシステムやサーバの仕様全般に関する白熱した議論が始まる。また、JIGSという名称の変更についても活発な議論が開始される。

●4月13日
 囲碁サーバの新名称について、投票を行なうことを決定。名称案はML会員から募集したもので、多数の候補が寄せられる。

●4月17日
 投票の結果、圧倒的多数でサーバの新名称がWING(World-wide InterNet Gokaisho)に決定する。「WING」はOSの命名によるもの。

●4月20日
 サーバの名称変更に合わせ、MLの名称も「WING-ML」に変更される。

●5月3日
 MLのメールサーバ移転。新しいMLは、WING-ML会員KNの提供によるもの。またメールサーバの移転により、WING-MLは「wing-ml」と小文字に変更される。

●5月9日
 WINGのログイン画面のデザイン案の募集を開始。

●5月23日
 MSとIKの二人がサーバ設置先に出向き、WINGのセットアップ作業をほぼ完了する。この時点でWINGの実験的な立ち上げに関しては、ほぼサーバ設置先のセキュリティの問題を残すのみとなる。

●5月25日
 囲碁MLのオフ碁会が世田谷砧公園で開催され、wing-mlのメンバー数名も参加。ほとんどの人が初めて顔を合わせる。

●5月下旬
 囲碁ML宛にMSが送った「まもなくWINGが実験的に立ち上がりそうだ」との投稿を見たためか、wing-mlのメンバーが増加。

●6月6日
 WINGのホームページ開設。トップページの絵は、ML会員のKJがログイン画面のロゴをベースにイラスト化したもの。ホームページ最初の訪問者はYT。

●6月8日
 日曜日午前5時49分、MSが「WING実験運用開始!」のビッグニュースをいきなりMLに投稿。会員に衝撃が走る。これより、WINGはML会員限定のテスト期間に入り、バグの報告やシステム上の問題点などが会員諸氏から次々と報告される。なおWING登録第一号はHL。

●6月末日
 来るべき一般公開に向けて、数名からなるユーザーサポートチームが結成され、合わせてサポートチーム用のMLが作られる。

●7月15日
 7月15日発売の月刊誌『NHK囲碁講座8月号』中の「パソコン囲碁広場」のコーナーで、見開き2ページにわたってWINGのことが紹介される。

●8月1日
 WINGでの対局数を増やし、レーティングシステムの動作確認をするために、囲碁ML会員のみなさんに協力を要請。同MLにてWINGサーバのアドレスを告知する。

●8月2日
 囲碁MLオフ合宿が神奈川県津久井湖で開催され、WING-MLメンバーも参加。「WING試験公開記念対局」と銘打ち、アマ強豪・長谷泉さんと合宿参加組との2子局が、同日午後7時頃よりWING上で行なわれる。合宿参加組は総勢10名で、いわば一方的な相談碁であったが、結果は長谷さんの3目勝ちとなる。記念対局の企画者はMT。

 そして、現在に至る……。 (文責:TK/記1997.8.30)





最終更新日(1998.5.15)